「メガネに起きるパラダイムシフト、期待される新たな価値」——映像ディレクター尾小山 良哉氏インタビュー

サングラスをかける尾小山さん

メガネ業界の外にいるプロフェッショナルな方々が、メガネをどう捉え、メガネとどう付き合っているのかを聞いていきます。

今回、インタビューさせていただいたのは、映像クリエイターの尾小山 良哉さん。映像のディレクターとして数々の映像作品を手がけるだけではなく、アート活動、カメラマンとしての活動など、幅広くご活躍されています。

映像表現という視覚と切っても切り離せないお仕事をされている尾小山さんに、お仕事やメガネのことについてお話を伺いました。

目次

コマーシャルとアート

尾小山さん「私の仕事には、誰かの問題を自分の表現で解決するコマーシャルなものと、自分の表現したいものを自由に表現するアートなものがあります。

コマーシャルな仕事はビジネス。反対の意見を述べるときは、しっかりと相手が納得できるような理由を言います。自分が好きかどうか、気に入るかどうかよりも、相手のニーズにちゃんと応えられているかどうかを大切にして、映像を作っています。」

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上の画像をクリックすると作品ページに移動し、尾小山さんが手がけられた作品を見ることができます。

尾小山さん「一方、アートは自分との対話、自分のポエムのようなものです。誰の意見も入れず、何か言われたとしても自分が嫌だから嫌、と反対するのに理由は必要ありません。

アートとして映像を作っているときは、とてもわがままになっています。むしろ、そうじゃなかったらやる意味がないと思っています。どんどんコマーシャルとアートの違いは明確になってきて、没頭する量も違いますね。」

普段、どういったときにメガネをかけられますか?

尾小山さん「普段は、サングラスをかけることが多いですね。特に緊張感を持った状態で人と会うときに、サングラスやメガネをかけていることが多くあります。あまり自分の素顔を見せないように、メガネをかけることで、フィルターをかけたがっているんだと思います。

緊張しているといっても、プレゼンする時などは相手に自分の顔を覚えてもらわないといけないので、そういったときはメガネはかけません。メガネによって外から守られている分、自分から外への眼力のようなものは弱くなってしまうと思っています。自分のオーラを出したいような瞬間は、メガネを外しますね。

それ以外にも、パソコンを使っての作業の時間が多いので、室内でJINSのPCメガネを着用しています。これをかけるようになってから目の疲れがかなり和らぎました。」

サングラスをかける尾小山さん

メガネの新しい領域

尾小山さん「医療器具としてのメガネは、レーシックとかコンタクトレンズで代替可能になってきていて、メガネをかけない選択をすることもできるようになってきています。その流れの中で、今メガネの存在意義は曖昧になりつつある。花粉メガネや、PCメガネなど、従来のメガネとは違った価値を提供するメガネも登場してきています。

私の場合、視力は良いほうなので、視力を矯正する医療器具としてのメガネは必要ありません。ただ、メガネをかけていると、ドライアイやピントフリーズから目を守ってくれるので、目を守るために楽にするためにメガネをかけたりはしています。

人がメガネに求める価値は多様になってきていて、メガネの価値にパラダイムシフトが起き始めていると思います。

これは携帯電話の歴史を遡るのが一番わかりやすいかもしれません。最初はとても大きく、持ち運ぶのも大変だった携帯電話も、今ではスマートフォンのような小さなものとなり、通話以外の様々な機能が内蔵されるようになりました。今では電話として捉えている人より、小さなコンピュータとして捉えている人も多いのではないでしょうか。」

google glass

尾小山さん「最近、GoogleがGoogle Glassという新たなデバイスを発表しました。メガネのように顔に装着する形式の、ウェアラブル・コンピュータと呼ばれるデバイスです。形状はメガネに近いものの、スマートフォンと同じようなことが可能になります。携帯電話から始まり、次はウェアラブル・コンピュータと呼ばれるものへと変化しようとしています。

視力を矯正するものとしての、ファッションとしてのメガネから、ウェアラブル・コンピュータとしてのメガネへと、変化が起きていく可能性は十分にあると考えられます。」

視覚が人に与える影響

尾小山さん「これらのテクノロジーの変化から、今後エンターテイメントとメガネはとても密接な関係を持つようになると思います。没入体験を最も演出するには、視野を囲うという行為が一番ですから。

ヘッドマウントディスプレイのように、エンターテイメントに没入する環境で、表現に用いられるデバイスがメガネであることにより、見渡せば見える景色、身体ごと体験することも可能になります。仮に部屋すべてがディスプレイとなり、映像を映し出す状態とどちらが人間はリアリティを感じるのでしょうか。

目は人間が得る情報の90%を占めていると言われ、視覚情報が人間に及ぼす影響は非常に大きいものです。」

(インタビュー終わり)

【プロフィール】
尾小山 良哉。1973年 石川県生まれ、1996年 金沢美術工芸大学卒業。同年太陽企画株式会社 企画演出部に入社、弱冠24歳からTV-CMの演出を開始し、毎日広告デザイン賞第1部優秀賞(1996)LONDON INTER NATIONAL AWARDS FINALIST(1999)など、早くから映像ディレクターとして頭角を表す。

その女性的とも言われる繊細な映像は、「明治製菓 Meltykiss」「東京ディズニーリゾート」のTV-CMや倖田來未などのミュージックビデオを始め、TBS「24人の加藤あい」や「安室奈美恵 BEST FICTION TOUR 2008 -2009」TOUR VJといった、あらゆる映像表現のフィールドにおいて高い評価(2002 YOUNGGUNS “DIRECTORS” FINALIST / 2007 NEWYORK FESTIVALS OF ADVER TISING FINALIST など)を得ている。
HP:http://drawiz.co.jp/director/

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