知的メガネを掛けて哲学を語ろう!#2【パルメニデス】

こんにちは。

メガネを掛けて哲学を語ろうという事で、前回から始まったメガネ×哲学シリーズです。

今日も引き続き、古代ギリシャの哲学者に焦点をあててみようと思います。

古代ギリシャの哲学についてですが、前回の話だけでも様々なアイデアが登場してきましたね。
万物の根源が水だという人もいれば、火だという人もいる。
ピタゴラスの定理を発見したことで有名なピタゴラスはそれが「数」だと主張しました。

目次

たった一つのあるもの

中でもかなり手ごわい哲学者がいます。
パルメニデス(B.C515~B.C450)です。
彼の思想内容の大きな特徴は生成変化(生まれ、変わり、そして無くなっていく変化)を否定し、真理はまさに「存在」にあると考えているところです。

さてその存在とは一体何なのでしょうか?

彼は自らの思想内容を表す詩を書き、次のようなことを述べています。
物事を探求するには二つの道がある。
一つは真理に向かう道で「有るものはある」「有らぬものはあらぬ」と説く道と
もうひとつは臆見(思いこみ)へ向かう道、「有るものがあらず」、「有らぬものがある」と説く道だ。

「存在しているものは存在しており、存在していないものは存在していない」。
これこそ彼が真理であることだと喝破した事実なのです。

ギリシャ美術

ギリシア美術の彫刻

古代ギリシャ哲学者達への批判

さて、この真理と共にパルメニデスは彼より前の以前紹介した哲学者達を批判します。
タレスは万物の根源を水であると考えました。
ここでパルメニデスは考えます。
「自然のまさに根底にある「おおもとの素材」である水が木や人間や動物になったりすることはありえない。

といのも、万物の始原は発生することもないし、消滅することもないからだ。
なぜなら有るものが発生するのであればその有るものはかつてはなかったのであり、また逆に有るものが消滅するのであれば、その有るものはなくなってしまうから。
有るはずのものがなくなること(またその逆)はまさしく臆見へと至る道だ。
とすれば生成変化というものは本当は存在しない」と。

彼はそこで、発生も消滅もしないものをさして、「有るもの」(存在)とだけいうのです。
この有るものの他に、もし別の存在があるのだとすればそれは無でしかありえないのだから、有るものとは一者でしかない。
場所の「変化」である運動もまた存在せず、存在するものは従って何一つかけることなく満ち満ちている存在なのである。

パルメニデスの擁護

さて、このパルメニデスの思想、とても難しいとともにあまりにも私たちの感覚から離れたことをいっており、にわかには信じがたい気がします。
当時のギリシャ人もそう思っていました。
現に私たちは動き、変化し、存在しているではないか、と。
パルメニデスにとってこうした反論は単なる矛盾を含んだ臆見だと考えていました。

そこで彼の意見を擁護するため、あるパラドックスが作られました。
ゼノンという哲学者は言いました。
「わかりました。それでは皆さんのおっしゃる通り、運動変化は存在するし、物は多数あるといたしましょう。」

アキレスと亀

アキレス

アキレス

ここで、ゼノンは足の速いギリシャ神、アキレスと亀とかけっこをさせようとします。
アキレスの方がもちろん足が速いのだからアキレスがいくらか後ろからスタートします。
両者ともに走りだし、アキレスはあっという間に亀がスタートした地点にまで追いついてしまいます。
しかし、亀もゆっくりではありますが、進んでいます。
そして亀が進んできた地点にまで次にアキレスがあっという間に到達してしまいます。
しかし、その時までには亀も進んでしまっています。
以下繰り返し。
結局、いつまでたってもアキレスは亀に追いつくことができない。

こうした矛盾を引き起こしてしまうのは、前提条件となる運動変化があるが誤りだったという、いわゆる背理法で運動変化は否定されることになります。

「多」の否定

そこで、古代ギリシャ哲学者達は言い返しました。
「いやいや、そうだとしても物が多数ある、という命題は正しいはずだ。」

そこでまたゼノンはいいました。
「わかりました。では物には多(複数)があるとしましょう。」

そこで、もしそれらが多であるならそれは有限なもののはずです。
なぜならそれはその数だけあるのであって、それ以下でもそれ以上でもないのだからね。

しかし、ものが多であるならそれは無限なもののはずです。
なぜならあるものAと別のものBの間には必ず何か別の物Cがあるのですから。
そしてAとCの間には必ず何か別の物Dがあるはずです。
そしてAとDの間には…以下繰り返し。

同じものが、有限であり無限であるのは明らかに同一律(A=Aは常に正しく、A=not Aは必ず間違いであるとする論理学用語)に反しています。
そこで、前提条件となっている「物には多がある」という前提条件が間違いだという事になります。

アキレスと亀のその後

かなりきわどい背理法ではありますが、とりわけアキレスの亀のパラドクスはいまだに難しくすっきりした回答を得られていないのが現状です。
20世紀、フランス哲学に大きな影響を与えた哲者、ベルグソンはこのアキレスと亀の問題を、連続的なものや運動について新たなそして重要な考えを提唱することで解決しようと試みます。

パルメニデスと哲学

ドイツの近代哲学者、ヘーゲルは「パルメニデスとともに本来の哲学がはじまる。イデアの世界への上昇がここにみられる」と彼の思想の後のギリシャ哲学者プラトンへの影響が大きいことを指摘しています。

次回は、ギリシャ哲学で間違いなく最も重要な哲学者、プラトンに焦点を当ててみたいと思います。

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