レンズにおけるアッベ数の秘密

さて、今回は少々難しいレンズに関連する用語であるアッベ数について簡単にお話しましょう。

アッベ数(the Abbe number)の名前の由来は、ドイツ人の物理学者(数学、天文学者)であるErnst Karl Abbe (1840年1月23日 – 1905年1月14日)のから来ています。

彼は近代光学の大家でドイツの大学で物理学と数学の教授をしていました。そして、日本でもカメラや顕微鏡のレンズで有名な、カール・ツァイスの工場で研究所長としても働いています。カール・ツァイス社は元々は顕微鏡の製造から始まった会社です。その後、彼は「カール・ツァイス社」を傘下としたカール・ツァイス財団(Carl Zeiss Stiftung )を設立しています。彼は物理学者としてだけでなく、検眼医(optometrist), 起業家(entrepreneur), そして社会改革者(social reformer) としても活躍しました。

アッベ数とは物理学や光学の用語で逆分散率(分散率の逆数)とも言われ、レンズにおける色収差(いろしゅうさ、chromatic aberration in lenses)の指標(index)です。

アッベ数をV (the V-number)やconstringence of a transparent materialとも表すこともあります。

色収差とはレンズと通過した対象物の光の焦点が合うときに、色の波長によって焦点距離が少しずつ違うために対象物の像にずれが生じることを言います。レンズを通った光は波長が違うために像の位置と大きさがずれるのです。色収差には軸上収差(位置のずれ)と倍率収差(大きさのずれ)の2つがあります。

つまり、あるレンズを通過した光(像)がどれくらい色の影響を受けるかをアッベ数で知ることができるのです。

レンズの材質(ガラスやプラスチック等)によってそれぞれ屈折率が違うので、色収差によって像の位置や大きさのずれが起きます。

そこで、そのずれを修正する(色収差を少なくする)ために屈折率の異なる材質のレンズを複数組み合わせます。レンズを組み合わせる数が増えると暗くなり、さらにコストもかかります。そのような色収差を少なくしたレンズを色消しレンズもしくはアポクロマートレンズといいます。

アッベ数はガラスレンズの光学的な特性を評価するのに用いますが、プラスチックレンズでも同様に使います。ここではやや難しいので公式(計算式)は省きますが、アッベ数が大きいと分散が小さくなります。そして、分散が小さくなると色収差も小さくなり、像のぼやけやにじみが少なくなり、見やすくなります。アッベ数は計算式を用いてある波長における屈折率の値から出します。

参考資料:
ガラスのアッベ数の求め方
Calculation of Abbe’s Number for Glasses

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